社長インタビューや社員紹介動画を自社で撮影したものの、「なんか安っぽく見える」と感じたことはないだろうか。映像の粗さより先に、視聴者は音の粗さに気づいている。
企業の採用動画や会社紹介動画において、インタビューパートは核心となる場面だ。社長の言葉、社員の表情、現場の空気感——それらを伝える映像の仕上がりは、実は音声によって大きく左右される。
弊社では長年、テレビ番組制作を通じて音声収録の現場を積み重ねてきた。企業VP(ビデオパッケージ)の制作においても、音声の扱いは映像品質を決定づける重要な要素だと考えている。今回は、インタビュー動画の音声がどのように作られているかを、現場の視点からお伝えしたい。
目次
なぜ「音」が映像の印象を決めるのか
人間は視覚よりも聴覚の違和感に敏感だと言われている。画質が多少荒くても内容は伝わるが、音声にノイズが乗っていたり、声が反響していたりすると、無意識のうちに「粗末な映像」という印象を持ってしまう。
実際、スマートフォンで撮影した企業動画とプロが制作した企業動画の最大の差は、音声クオリティにあることが多い。カメラの内蔵マイクは周囲の雑音を広く拾ってしまうため、エアコンの音、空調のノイズ、廊下の足音がそのまま収録されてしまう。編集で軽減することはできるが、収録時点で入り込んだノイズを完全に除去するのは難しい。
プロが使う2種類のマイク
インタビュー収録でよく使われるマイクは大きく2種類ある。ピンマイク(ラベリアマイク)とガンマイク(ショットガンマイク)だ。
ピンマイクは胸元に装着するタイプで、話者の口元に近い位置で音を拾えるため、周囲の環境音を相対的に抑えることができる。インタビューや対談など、話者が固定された場面での収録に向いている。一方、ガンマイクは指向性が強く、特定の方向の音だけを狙って収録できる。カメラマンが動きながら撮影するシーンや、マイクを見せたくない場合に有効だ。
どちらが正解というわけではなく、撮影環境・演出意図・話者の動きに応じて使い分けるのが現場の基本だ。両方を併用し、編集でベストな音をミックスすることもある。
収録環境が音質の8割を決める
機材と同じくらい重要なのが、収録する空間の選び方だ。広い会議室や、壁が硬いオフィスは音が反響しやすく、どれほど高価なマイクを使っても「風呂場のような響き」になってしまうことがある。
プロの現場では、事前に収録場所の音響特性を確認する。カーペットや家具が多い部屋は吸音性が高く、声がクリアに収録できる。音声のために撮影場所自体を変更したりすることも珍しくない。「どこで撮るか」を決める段階から、音声のことを考えているかどうかが、仕上がりの差になる。
ワイヤレスマイクが広げる収録の自由度
近年、ワイヤレスマイクの性能は大きく向上している。以前はケーブルを引き回すか、電波干渉のリスクを抱えながら収録するかという選択だったが、現在はデジタルワイヤレス技術の進化により、安定した音質を保ちながら話者の動きを自由にする収録が可能になってきた。
弊社でもB帯マイクはもちろんのこと、最近、ゼンハイザーの「Profile Wireless」を導入した。
これまでB帯の電波干渉が懸念されていたホテルの宴会場や商店街、ホールなどでも安定して使用できるようになり、ロケーションの選択肢がさらに広がっている。
「編集でなんとかなる」は音声には通用しない
映像制作の現場でよく聞く言葉に「後で編集でなんとかする」がある。映像と同様、撮影後にごまかすことが難しい。収録時に入り込んだノイズ、位相のズレ、反響音は、編集でできることに限界がある。
だからこそ、プロの音声収録には「現場での判断」が求められる。機材の選択、マイクの位置、収録環境の確認——これらをその場で適切に判断できるかどうかが、完成した映像の品質を決定づける。
インタビュー動画や採用動画の制作をご検討の際は、音声収録の体制についても、ぜひ依頼先に確認してみてほしい。「どんなマイクを使うか」「音声専任のスタッフがいるか」——その一言で、仕上がりの差が見えてくるはずだ。